人間は獣・畜生の一種に過ぎないという私の考え方は、「人間は万物の霊長」であるとする思い上がりも甚だしい考え方とは相容れない。その根拠について駄文をどうぞ。
「税金とは何ぞや?」という質問を受けたのは二十代の頃だった。当時の私は答えられなかった。
今の私はこう回答する「ヤクザのショバ代」です。国家と組織暴力団は合法か非合法かの違いを除けば、利害関係に基づく集団という点で共通しているから。
さて、集団で生活する猿の群れを見てみよう。猿の世界では君主制が採用されており、君主様はなかなかに忙しく日々を過ごしておられる。
具体的には食料及び領土の確保、群れの統治といったところである。
一国の民を食わせていくために、食料が得られる場所に基づき領土が制定される。領土が確保出来ない国家は消滅の憂き目を見ることとなる。
統治に関しては下剋上防止のため、時折自らの力を誇示もすれば、民の争いの調停までも行う。
外敵が国土に侵入した際には、兵隊達の大将として殿を務めるなど大忙しである。
ここまでは君主様の義務であるが、君主様は自らの子孫を残すこと、自らの食料を得ることについて優先権を有している。君主様は民が食料を独占することを原則として認めず、いったん納税義務を課すのである。
ここでやっとこさロシア人研究者達が登場する。
ご心配なさるな。素面で足取りも重かった彼(女)達には適量のウォトカが支給されておる。
ご覧なさい。ほろ酔いのロシア人研究者は猿の国土に好物であるグレープフルーツを隠し始めましたよ。
これに気付いた民達は狂喜乱舞、思わぬ授かりものに宴を催す有様。勿論、君主様への納税も忘れません。
がしかし、民の中にははしっこい者もおりまして、見つけたグレープフルーツを敢えてそのままにしておく始末。夜の丑三つ時、皆が寝静まった頃にこっそり授かりものを貪り食っている様を、酩酊したロシア人研究者は見逃しませんでした。
その後この脱税行為が発覚したか否かは、泥酔したロシア人研究者によっては確認されませんでした。
以上、猿の社会は人間の社会と大して変りがないというお話。
引用元は、お亡くなりになられた米原万里さんの随筆です。引用内容の不正確な部分についての責任は私にあります。詳細は書籍にあたってご確認のほどを。